ドクターコラム 4
96歳の超高齢脊椎手術~高齢者手術と長生きの秘訣~

「何歳まで脊椎手術を受ける事ができるのでしょうか?」
と患者様に、よくご質問をいただきます。
「お元気であれば何歳でも手術を受ける事が可能です。」もちろん、心臓疾患や呼吸器疾患など重い病気をお持ちの患者様はたとえ50歳でも全身麻酔の脊椎手術を受ける事が出来ない場合もあります。しかし、お元気な場合、100歳でも脊椎手術は可能と考えています。

先日、開業医の先生より96歳の患者様をご紹介いただきました。他の病院では「高齢なので手術は絶対にできない。」と何度も言われたようです。
患者様は苦痛のため歩行もままならない状態でした。年齢を基準に手術が不可能と判断することはあってはなりません。
当院入院後、各種画像検査、脊髄造影検査や神経根ブロックで病巣を絞り込み、運動療法を中心としたリハビリテーション、各種ブロックや点滴治療、薬物治療など十分な保存治療を施行しました。
下肢痛や歩行障害はいくらか改善したものの、退院できる状態ではありませんでした。内科医と麻酔科医に相談し、我々の手術であれば施行可能との判断を下しました。
しかしそのハードルは高く、麻酔時間60分以内、手術時間30分以内、出血は少量といった超低侵襲手術が求められるのと同時に、完全な脊椎除圧、厳重な全身麻酔管理、早期離床、厳重な術後管理などが必須です。
患者様は「病気を治したい、痛みをとりたい。」という希望に満ちあふれ、ご家族の強い後押しもあり、手術を施行させていただきました。
手術は成功し、すべて順調に経過、術後回復も素晴らしいものでした。
我々のチームワーク医療と患者様の頑張り、ご家族のお支えの結果、痛みは消失し、お元気に退院されました。

「もう一度人生をいただき、ありがとうございました。」と満面の笑みで退院された患者様。96歳からの再スタート。
いつまでもお元気で健やかに過ごされますようお祈り申し上げます。

「96歳まで長生きする秘訣はなんですか?」私は質問しました。
「好きな事をなんでも笑ってするといいよ。」
了解しました。私も96歳を目指して、笑って診療を続けていきたいと思います。

本記事とお写真は患者様とご家族のご了解をいただき掲載しています。